高知地方裁判所 平成4年(わ)88号 判決 1992年9月09日
本店所在地
高知市和泉町五番二〇号
有限会社
マサヤ企画
(右代表者取締役 濱田靖子)
本籍
高知市新京橋四番地
住居
同市北本町一丁目一番一六号
会社員
濱田誠弘
昭和一八年一二月二四日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官鈴鹿寛出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人有限会社マサヤ企画を罰金一三〇〇万円に、被告人濱田誠弘を懲役一〇か月に処する。
被告人濱田誠弘に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人有限会社マサヤ企画(以下、被告会社)は、高知市和泉町五番二〇号に本店を置き、遊技場の経営等を目的とする法人であり、被告人濱田誠弘(以下、被告人)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部を除外する等の不正な方法により所得の一部を秘匿した上、
第一 昭和六二年九月一日から同六三年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が一億四三三四三万五二七九円で、これに対する法人税額が五九二四万四九〇〇円であるにもかかわらず、同年一〇月三一日、高知市本町五丁目六番一五号所在の高知税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が四四〇四万五二七九円でこれに対する法人税額が一七五三万八九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成四年押第二六号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額と申告税額との差額四一七〇万六〇〇〇円を免れ、
第二 昭和六三年九月一日から平成元年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が七〇四七万一一七七円で、これに対する法人税額が二八六二万六七〇〇円であるにもかかわらず、同年一〇月三一日、前記高知税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が四六三〇万六〇五六円でこれに対する法人税額が一八四七万七四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成四年押第二六号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額と申告税額との差額一〇一四万九三〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 被告人の公判供述
一 被告人の検察官調書(検察官請求番号乙11。以下括弧内は同番号を示す)、質問てん末書六通(乙1ないし3、8ないし10)
一 上田龍太郎(二通。甲28、29)、石山彰二(二通。甲30、31)の各質問てん末書
一 現金調査書(甲7)
一 普通預金調査書(甲8)
一 定期預金調査書(甲9)
一 代表者貸付金調査書(甲10)
一 未払金調査書(甲12)
一 長期借入金調査書(甲13)
一 仮受金調査書(甲14)
一 売上調査書(甲17)
一 受取利息調査書(甲18)
一 支払利息調査書(甲19)
一 臨検てん末書(甲21)
一 証明書三通(甲22ないし24)
一 商業登記簿謄本(乙14)
判示第一の事実について
一 脱税額計算書(甲2)
一 押収してある法人税確定申告書(甲5、平成四年押第二六号の1)
判示第二の事実について
一 脱税額計算書(甲3)
一 仮払所得税調査書(甲11)
一 未納事業税調査書(甲15)
一 損金の額に算入した県民税利子割調査書(甲16)
一 租税公課調査書(甲20)
一 押収してある法人税確定申告書(甲6、平成四年押第二六号の2)
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一〇か月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。
さらに、被告人の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、いずれも法人税法一六四条一項により判示各罪につき同法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告会社を罰金一三〇〇万円に処することとする。
(量刑の理由)
本件は、被告会社を統括していた被告人が、被告会社の営業資金や被告人の子供たちの生活資金等を蓄える目的で、判示の各犯行に及び、その結果二事業年度にわたり合計五一八五万五三〇〇円の法人税を免れたという事案であり、国民の基本的かつ重要な義務である納税の義務を不正な手段により免れようとしたばかりでなく、そのほ脱額は多額であり、ほ脱率も低いものではなく、ほ脱の動機も格別酌むべき事情とはなり得ないことに照らすと、被告人及び被告会社の刑事責任は重いといわなければならない。
しかし、他方、本件のほ脱の方法は比較的単純で必ずしも巧妙、悪質とまでは言えないこと、被告会社において、本件ほ脱にかかる本税、延滞税、重加算税等を既に全額納付済みであること、被告人が本件を反省し、今後の公正な経理処理を実現する体制を整える努力をしていること、被告人には前科がないこと等被告人らに有利な事情もあるので、これらを総合して、被告人らをそれぞれ主文掲記の刑に処し、被告人に対してはその刑の執行を猶予することとした。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 隅田景一 裁判官 久我保惠 裁判官 酒井康夫)